自己紹介
初めまして。株式会社 微分 COO の大川です。今回が仁政ブログの初投稿になります。
会社について
弊社は創業からまだ 1 年も経ていない小さなスタートアップです。そのため、会社として成熟していない部分を挙げればきりがありません。むしろ増大するエントロピーを感じる日々でございます。それでも、いずれ会社が大きくなり、メンバー一人ひとりの天分が開花することを確信し、鳥瞰図をもった経営を続けて参りました。実際、歩幅こそ狭いですが、地に足の着いた経営を行うことで、少しづつではございますがメンバーも増えてきました。創業を開始してから半年ほどで事務所を移転することができたことは、非常に大きな喜びの一つとなりました(我々は古き良き時代の一軒家を好んでおり、来訪された方には和室で OMOTENASHI いたします。今後、微分が成長し、本社に続く記念すべき支社ができた際には、大きな茅葺屋根の家で自然に囲まれながら働くことができればと考えております)。 さて、いずれ開花するであろう微分が今のうちから大切にすべきことは 1 つです。それは、圧倒的なカルチャーを成熟させ、社内外問わず浸透させること。今回の投稿では微分のカルチャーについてお話しさせていただきます。柱は 4 つです。
1 つ目 「全員が研究開発を行うこと」
1 つ目は、多々の会社のように特定で R&D(研究開発)部をもたず、メンバー全員が研究開発部に属すると考えるカルチャーです。弊社の一つの特徴として、「失敗の費用」を事業計画に含めていることが挙げられます。弊社は予算に余裕があるわけではありませんが、たとえ自転車操業に陥ったとしても、この「失敗の費用」は今後も変わることなく弊社の事業計画には含め続けたいと考えています。微分がメンバーの失敗を大切にしている理由は非常にシンプルです。それは、たとえメンバーが幾度となく失敗したとしても、1 回の成功で過去の失敗は全てペイができると考えているからです。そして、体験的に失敗を続ける習慣を持ち知識を積分させていくことこそが、個人にとっても微分にとっても中長期的な成功に導く最も効率的な策だと考えています。
一般的に知識とは、命題可能な陳述記憶のうち、言語で表現できる意味記憶に属します。知識を身に付けるということが非常に大切なことに論を俟ちません。その一方で、テクノロジーの発展により、知識の価値は相対的に下がってきたことも事実です。背景には、知識が外注できるようになったことが指摘されております。他方で、ピアノを弾くことや、祖父母から聞く戦争の経験談などは頭のみではなく、肌や身体で記憶しようとします。これを「手続き記憶」といいます。そしてこの、「手続き記憶」は意味記憶のように外注することができません。我々は失敗という経験は「手続き記憶」に属すると捉えており、どのような意味記憶よりも価値があるものだと捉えています。身を以て失敗を経験することで、メンバーはより具体的な回避策や内省を検討することになると思われます。したがって、我々微分は、全てのメンバーに失敗を推奨しています。これが1つ目のカルチャーです。
2 つ目 「知行合一」
そこで重要になってくるのが、微分の2つ目のカルチャーに繋がります。2 つ目のカルチャーは「知行合一」です。知行合一とは、王陽明が唱えた陽明学の学説であり、真の知識とは実践によって裏付けられていなければならないという考えです。経営陣自身も含めすべてのメンバーには決断を1秒で行うことを促しています。そして、迅速な意思決定の足枷となりうる要素は、気づき次第に撤廃してきました。
例えば、メンバーが会社の経費を使って購買をする際、承認は不要としています。それは、デスク回りのペンの購入からパソコンのモニター、更には PC の購入と言った高価なアイテムまで、メンバーは承認不要で自由に即購入することができます。メンバーは勤務中であっても好きな時間に昼寝をすることもできますし、ピアノを弾きに出かけるメンバーもいます。日本の多々の会社は様々な形でルールを好みます。厳格なルールを作ってパノプティコンのように従業員を監視しなければ、彼らのパフォーマンスが発揮されないと考えるからではないでしょうか。性悪説に立って日本社会に根深く残る人事制度の一つのように思います。我々は全てのメンバー常に最良の判断ができると信じているため、そもそもルール自体を必要としません。このようなスムーズな意思決定ができるよう、経営陣はメンバーに対し、常々、微分の意思決定には2つの種類があることを伝えます。可逆的な意思決定と不可逆的な意思決定です。
可逆的な意思決定とは、意思決定をした後に誤りに気付けば、いつでもやり直せる程度の意思決定を指します。新しい技術の導入や金銭的な投資は概ねこの可逆的な意思決定に属します。他方、不可逆的な意思決定とは、一度決定してしまうと変えることが非常に大変、または不可能な意思決定を指します。不可逆的な意思決定としては、投資家に投資して株を譲ることや、会社のエグジットなどがそれに属します。つまり、会社に係るほとんどすべての意思決定は可逆的なものだということです。管見する限り、日本の多々のスタートアップは起業早期ではメンバーに裁量を与えますが、会社が大きくなるにつれて、可逆的な意思決定さえも不可逆的な意思決定だとすり替え、会社全体として守りに入り、結果として、メンバーの意思決定を鈍らせてしまうケースがあります。我々は全てのメンバーが 1 秒で意思決定ができるよう、不可逆的な意思決定は予め截然と分けて説明し、ほとんど全ての意思決定が可逆的なものであること強調します。それにより全メンバーの知行合一を可能としているのです。誤った判断をした際には、またやり直したら良いだけの話であって、我々に必要なことは、知行合一的思考の涵養と実現です。
3 つ目のカルチャー 学歴不問
微分 3 つ目のカルチャーは優秀な人材を確保する目的で学歴不問論を唱えていることです。人生 100 年といわれる時代の中で、学歴は初めの 1/5 の結果にしか過ぎず、そこでフィルターをかけてしまうことは、あまりにも多くの可能性を潰すことにってしまいます。そもそも、人間の学歴は往々にして社会文化資本(子どもが育った家庭環境)で決定されますし、世間で一流大学と評価される大学を算数がわからないまま卒業する人たちも跋扈する今日、学歴でフィルターをかけてしまうことは、全くもって非合理であると考えています。我々は世の中を微分したいと考えており、あらゆる角度から多角的に世の中を微分するためには、様々な人材に微分と関わっていただく必要があるのです。微分には多様な価値観が注がれるべきですし、様々な視点を取り入れることで真にインクルーシブな社会の実現に寄与できるように思います。
我々は、人生 1/5 の結果よりも、常に学び続けられるか、すぐに行動に移せるか、周りの人たちを大切にし、どのような人からも学びを得ようとする姿勢はあるのか、歴史に学ぶ柔軟性を持っているのか。そうした要素を総合的に評価し、素晴らしい人材の発掘に繋げていきたいと考えております。多様な視点を取り入れる場合、日本人オンリーのドメスティックな職場環境では、多面的な視点の流入を期待することは極めて困難であり、砂上の楼閣であるといえます。これこそ、我々が積極的に世界中の国々から新しいメンバーを歓迎している大きな理由の一つです。様々な国籍の人たちを招き入れる目的で、我々は創業してすぐに、社内の公用言語を英語に切り替えました。各ミーティングは全て動画での議事録を取っているため、日本人同士の意思疎通も原則英語で行っております。日本人にとっては短期的には生産性が落ちたとしても、我々は常に中長期の成功を優先しています。このように、多様な価値観の集合体として微分という会社を存続させたいと考えております。そのように考えた末、我々は学歴不問という立場をとることにしました。
4 つ目のカルチャー 全員が本気で世の中を微分しようとすること
微分 4 つ目のカルチャーは、全てのメンバーが世の中を強く微分したいと思っていることにあります。我々は微分を「世の中の不合理に対し、服従ではなく、一つ一つ問題を解決していくこと」と定義しています。そして一人一人が世の中の蔓延る問題に対し当事者意識で解決策を持てる社会の実現に邁進したいと考えております。例えば議論の場で、一見多くの支持を得ているように見える意見に対し、たとえ自分が反対の意見を持っていたとしても、孤立することを恐れて、自分を少数派として認識した人は次第に発言を控えるようになる現象を「沈黙の螺旋」と言います。沈黙の螺旋は、本当は少数派で虚勢かもしれない架空の大きな声が実際の大勢派に成り上がってしまうことに危険性をみます。「本音はこう思うけど、他人からこう思われるのは嫌だから、自分の意見を表明しないでおこう」、このように自分の意見ではない意見に同意せざるをえない社会を我々は微分したいと考えています。本音ではない意見が集まってできた虚像の意見を正しいものと謬見し、人々が無意識に従ってしまう状態を「多元的無知」と言います。これにより、社会の分断は著しく進み、あげく、頽落をみました。自分の頭で考え、たとえそれが少数派の意見であっても悩むことなく尊重される社会を微分は築きたいと考えています。メンバー一人一人がこうした社会の実現に向けて真摯に取り組んでいることを 4 つ目のカルチャーとして挙げさせていただきました。
最後に
我々は、強みである画像認識とインターネットの技術を用いて、世の中を微分したいと考えております。前途多難ではございますが、右上に傾く微分であれるよう、盲信に盲進を続けます。今はまだ偏微分しかできない微分ですが、いずれ全微分できるような会社となりますよう、これからもどうぞ微分をよろしくお願いいたします。